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相模原の事件についておもったこと②

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相模原の事件についておもったこと②
被害にあわれた方のご冥福を心からお祈りいたします。

今日は、加害者のこと。

容疑者が逮捕されているが、容疑者の措置入院解除の判断の是非が問われていること、大麻の陽性反応が出たということが大きく報道されている。

措置入院というのは、「精神的な病気の症状があって、なおかつ、自傷他害の恐れがあると判断された人が強制的に入院できる方法」のこと。
それは精神保健福祉法という法律で決められている。
私が今回の事件の報道でとても気になっているのは、危ない思想、考えを持った今回の容疑者はもっと長く措置入院させられなかったのか。という議論である。
この措置入院に必要なのは、「精神的な病気の症状があること」。『精神症状ゆえに』自分や他人を傷つける恐れがあるから強制的な入院が必要ということ。危ない思想や考えを持っていても捕まえることや措置入院はできない。入院しても自分や他人を傷つける可能性がなくなれば退院できる。日本は法治国家なので、それは当然のこと。

私は以前、東京都の精神救急医療情報センターというところで働いてた。
そこは、夜間や休日に精神科の救急の入院を扱うところで東京都下全ての精神科の強制入院である医療保護入院の情報が集まるところだった。同じフロアの隣のブースには、今回話題となっている措置入院の情報が集まる場所があった。
精神科の強制入院には大きくわけて、措置入院と医療保護入院の2つ(細かくはもう少しわかれる)。この違いは精神的な病気の症状があり、自分や他人を傷つける可能性があるのが、措置入院。精神的な病気の症状があり、自分や他人を傷つける可能性がないのは、家族の同意を得て医療保護入院となる。

そのセンターで家族や本人、警察、本人の周りの人からの電話をとって状況を聞き、医師に相談をする。電話をとる状況から、これは入院できたらどんなにいいかと思うことはしばしばあった。しかし、全ての入院ができるわけではない。「強制入院が不法な入院にならないように。たとえ、強制的な入院であってももちろん本人の人権が守られるように精神的な病気の症状があるかないか」を検証しながら様々な人が様々な立場(医師、看護師、心理士、ソーシャルワーカー、警察など。もちろん最終決定は医師が行う)から考え判断している。

だけれど、テレビをつけるとなぜ退院させたのか、もっと監視しておけなかったのか。それと、大麻の陽性反応がでたことについての報道も、だから、こんな危ないことをしたんだという浅はかな議論。それなら、大麻が合法の場所では犯罪ばかりが起こってしまうはずなのに。すべて簡単にそこがこの事件のそもそもの問題だったと言わんばかりの報道。
もちろん、退院に不備がなかったのかはきちんと検証しなければならない。たくさんの人が犠牲になったのであるから。

でも容疑者がなぜそんな考えに至ったのか。どんな背景があったのか。どうして、障害者施設で働くことになったのか。どうして、ヒトラーの考えが降りてきたのか。どうして降りてきた考えをそのまま実行するにいたってしまったのか。

それをもっともっと考えていく必要があると思う。

精神障害を持つ人、薬物をする人がすべて危険な思想や考えを持つわけではない。多くは、犯罪は起こさない。全ての事件の検挙数の精神障害数割合は全体の約1%である。
精神的に病気の症状があるかないか、それが自分や他人を傷つける可能性があるかないか。ということが重要なのである。

こうやって凶悪事件がおこると犯人の異常性があたかも精神症状があったからだと報道は大きく取り上げる傾向にある。
自分と同じような人がこういった凶悪事件を起こしたとは思いたくないからだ。遠くの自分とは関係ない自分には理解できない人がひどい事件をおこした。精神病の人が起こした事件だと、考えることをやめてしまいたくなる。それほどこわいと感じるからだ。

この事件は、被害にあった知的障害を持つ人への偏見、そして、加害者の精神症状が取りざたされることで精神障害を持つ人へも大きく偏見を持たれる事件となってしまったと思う。

障害を持つ人の施設で働いたり、精神科の救急のセンターで働いていた私は、この事件についていまだ全く「わからない」というのが今の思い。
こうだからだ。これが原因だからだ。と今の段階で、決めてしまいたくなるけれど、まだまだ情報がなさすぎて、そして、いろんな要素が絡みすぎていてすぐにわかる話ではないと思う。
いまは、まだ「わからない」でいいんじゃないかなと思う。だからこそ、注意深く考えなくちゃいけないし、知っていかなくてはいけないと思うことができるからだ。
だんだん、報道も減ってきているのも気になる今日この頃。

長く読んでくださりありがとうございました。
by wakuru | 2016-07-30 22:19 | 思うこと